花の魔女

倒れ込んだナーベルの上にラディアンが馬乗りになり、剣の切っ先をナーベルの喉元に向けている。



ああ、

私、ラディアンに殺されるのね。



ぼんやりとする思考でそう悟った。


ナーベルのことなどまるで知らないかのように、無表情に見下ろしてくるラディアンの瞳を見つめた。



できることなら、もう一度あなたの青の瞳に私を写して欲しかったのだけれど……


あなたに殺される日がくるなんて、思いもしなかったわ……。



ラディアンが剣を振り上げる。


ナーベルの目から、ぽろりと涙がこぼれ落ちた。


「―――ラディアン」




一瞬、ラディアンの動きが止まったかのように思えた。


次の瞬間、浴室のドアが勢いよく開き、何かがラディアンを吹き飛ばした。


「ナーベル様!」


「ナーベル!」


フィオーレたちだ。


ナーベルは自分のまわりに浮かぶ光の粒子を見て、フィオーレが助けてくれたのだとわかった。


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