花の魔女
女は舌打ちし、ラディアンを呼んだ。
「今日はここまでよ」
ラディアンは素早く魔物の上に飛び乗り、女の隣に立った。
ナーベルはただぼんやりとその光景を見つめるしかなく、黒い髪の女は満足そうにナーベルを見下ろした。
「今日はあなたをいじめに来ただけなの。今度はちゃんと、殺してあげるわ」
そして魔物に何やら命令し、魔物はその図体からは予想もつかない動きで素早くくるりと方向転換した。
どこに隠していたのか、バサリと魔物の背中に黒く大きな翼が生えた。
――ああ、行ってしまう。
ナーベルがそう思ったときだった。
「ドロシー様!」
女の名前を叫んだのは、ルッツだった。
ドロシーはバッと振り返り、ルッツを見ると目を大きく見開いた。
ナーベルたちもルッツを見る。
「ど、どうして……?ルッツ……あなたが」
「ドロシー様、お願いします、もうやめて下さい」