花の魔女

「ラディアン!?」


苦しそうに顔を歪めたラディアンの背に手をやって、はっとした。

手のひらには赤く生ぬるい血がベットリとついて、ナーベルは青ざめた。


すぐにラディアンの背中を確認すると、案の定、服は綺麗に引き裂かれ、大きな鷹の爪痕が生々しく残されていた。


ラディアンは鷹の鋭い爪から、身を挺してナーベルを守ってくれたのだ。


「ラディアン…!」


涙声で彼の名を呼び、痛みに汗を浮かべるラディアンの頬に手を当てた。

鷹が啼いて、ナーベルはラディアンを横にさせると鷹を睨み上げた。


「なんてことをするの!」


雷雨の中、鷹は嘲るように二人の上を旋回している。

次こそはお前の番だとでも言うかのように啼くと、ナーベル目がけて急降下した。


結界は砕け散っていて、ナーベルを守るものはもう何もない。

花の結界はルッツたちのために張っているので精一杯だった。


ナーベルは目を閉じた。


目を閉じてーー



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