花の魔女
さわさわと風で揺れる木々たちの間をすり抜けながら、二人は森の奥に進む。
ときどき、ラディアンは足下に生えている草を摘んではカゴに入れていった。
「これはマキワビ草。葉がくるくるしてるのが特徴だ。頭痛薬になるんだよ」
「わぁ。可愛い」
ラディアンは新しく摘むたびに説明してくれて、ナーベルもラディアンに倣ってマキワビ草を採り、 観察してみた。
マキワビ草はきれいな緑色の薬草で、ラディアンの言うとおりくるくるとした可愛い葉が細い茎に抱きつくように生えている。
ナーベルは草をラディアンが持っているカゴにいれ、ふと目についた木を指差した。
「ねぇ、あの木はなんていうの?」
幹が太く枝がうねる木々に囲まれた中で、わりとすっきりとした背の高い木だ。
「ああ、あの木はメタセコイア。針葉樹だよ」
「なんだかきれいね」
ナーベルは木の下に寄り、背の高い木を見上げた。
風が吹くと、波のように葉が揺れた。
「もう少ししたら実をつけて、秋になったら紅葉するよ」
「本当?楽しみだわ」