花の魔女
「これはわたくしが今まで誰にも教えずにあたためてきた力ですの。きっとラディアン様もご存知ありませんわ」
フィオーレの言葉に、ナーベルは困惑した。
「いいの?そんな力を私なんかに教えてしまって」
フィオーレはナーベルの心配を打ち消すように大きく頷いて見せた。
「ナーベル様はわたくしが認めた力ある魔女。誰よりも先にこの力を習得して頂きたいのです。それに、この力が使えるのは真に平和を願い、幸せを望む心優しい者だけ。ナーベル様はすべての条件を満たしていますわ」
ナーベルは目を丸くして、少し後退りした。
「そんな!私、無理よ。そんな大層なものじゃないもの」
泣きそうな表情を浮かべてうつ向いてしまったナーベルの頬に、フィオーレはそっと手をあてて上を向かせ、微笑んだ。
「どうか気弱にならないで。あなたなら必ずできます。さぁ、これは時間がかかりますからさっそく始めましょう?」
フィオーレはそう言ってどこからともなく美しい薔薇を取り出し、ナーベルの髪にそっと差し入れた。
フィオーレに勇気づけられ、ナーベルはようやくこくんと頷いた。