花の魔女
教会の中には、特別なときにしか袖を通さない衣装に身を包んだ、年老いた村長が杖をついて立っていた。
「おお!アイリーン、よくぞ連れてきてくれた!」
「ナーベルったら全然興味を示さないんですもの。それは苦労しました」
無理矢理引っ張って連れて来ただけのくせに、よく言うものだと思いながらアイリーンを横目で見た。
(村長様が呼んでいたのなら、そうと言えばいいのに)
それにしても、村長はなぜ自分を呼んだのかわからない。
「あの、村長様。一体私に何のご用があったのでしょう?」
ナーベルがそう尋ねると、村長とアイリーンは目を合わせて、にっこりとナーベルに笑みを向けた。
途端、ナーベルの頭に嫌な予感がよぎった。
「おめでとう、ナーベル!そなたはベルネット家の花嫁に選ばれたのじゃ!こんなに名誉なことはないぞ!」
「……え?」
「ナーベルおめでとう。うやらましいわ!」
「……あの」
「今日はあの方もお忙しいようだから、後日改めてお会いしなさい。いやいや、それにしてもなんとめでたい!」
騒ぐ二人についていけず、ナーベルはぽかんとしたまま二人の間につっ立っているしかなかった。