花の魔女
そうこうしているうちに、村長の屋敷に着いた。
やはり年頃の娘達が着飾って周りに集まっている。
普段は村長の家になんか若い娘は寄り付きもしないのに、今日だけはまるでお祭りのようだ。
その娘たちのうちの一人が、アイリーンに気づいて声をかけてきた。
「何してたの、アイリーン。遅かったわね」
「ええ、ちょっとね。ナーベルを探してたの。ねぇ、村長様はどこにいらっしゃるか知ってる?」
娘はこくりと頷いた。
その目には不思議そうな色が映っている。
「ええ、知ってるわ。先程教会に行くと言って出ていかれたの。…でもあの方は一緒じゃなかったわよ?」
「そっか、教会ね。ありがとう!」
アイリーンはその子にお礼を言って、またナーベルの手を引っ張って走り始めた。
ナーベルは目をぱちぱちさせながらアイリーンにおとなしく着いていったが、どうにもアイリーンの行動がわからない。
村長なんかに会って、どうするつもりなのだろうか。
二人は息を切らして教会まで辿り着いた。
教会の大きな扉はしっかりと閉じられている。
アイリーンは呼吸を整えると、ちらりとナーベルを見てから、扉を開けた。
「村長様、ナーベルを連れて来ました!」