花の魔女

―――――――――――――――――――


「どういうことなの?」


村長から解放されたナーベルは、教会から出た途端アイリーンを問い詰めた。

アイリーンはぺこぺこと頭を下げている。


「ごめんね。本当は私、知ってたの。探し人がナーベルだって」


「知ってた?」


ナーベルは眉を顰めた。


「実はナーベルに会う前に、噂の方に会ったの。探しているのは黒い髪の娘だって言われてすぐにピンと来たわ」


「それで……」


それでアイリーンはわざわざ自分を迎えに来たのだ。

こういう話に興味がないナーベルは絶対に村長のところに行かないとわかっていたから。


「本当にごめんね」


騙したことを何度も謝るアイリーンに、ナーベルはもう怒る気など少しもなかった。


「でも、アイリーンは狙ってたんじゃなかったの?」


ナーベルは一番気になっていたことを尋ねた。

彼女はこの話をするとき、とても生き生きとしていたのに。

アイリーンはふふんと笑ってみせた。


「最初はね。でも、ナーベルだって気づいてすぐに諦めたわ。ナーベルには幸せになってもらいたいの、私」


そう言ってから、少し眉を下げた。


「ナーベルは欲がないでしょ?いつも人に譲ってばかりで損してたよね。だから今回はちゃんと手に入れて欲しかったの」


「アイリーン……」


< 7 / 244 >

この作品をシェア

pagetop