花の魔女
―――――――――――――――――――
「どういうことなの?」
村長から解放されたナーベルは、教会から出た途端アイリーンを問い詰めた。
アイリーンはぺこぺこと頭を下げている。
「ごめんね。本当は私、知ってたの。探し人がナーベルだって」
「知ってた?」
ナーベルは眉を顰めた。
「実はナーベルに会う前に、噂の方に会ったの。探しているのは黒い髪の娘だって言われてすぐにピンと来たわ」
「それで……」
それでアイリーンはわざわざ自分を迎えに来たのだ。
こういう話に興味がないナーベルは絶対に村長のところに行かないとわかっていたから。
「本当にごめんね」
騙したことを何度も謝るアイリーンに、ナーベルはもう怒る気など少しもなかった。
「でも、アイリーンは狙ってたんじゃなかったの?」
ナーベルは一番気になっていたことを尋ねた。
彼女はこの話をするとき、とても生き生きとしていたのに。
アイリーンはふふんと笑ってみせた。
「最初はね。でも、ナーベルだって気づいてすぐに諦めたわ。ナーベルには幸せになってもらいたいの、私」
そう言ってから、少し眉を下げた。
「ナーベルは欲がないでしょ?いつも人に譲ってばかりで損してたよね。だから今回はちゃんと手に入れて欲しかったの」
「アイリーン……」