花の魔女
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「……あら、わたくし」
「フィオーレ!」
ナーベルの手によって目を覚ましたフィオーレに、ナーベルは勢いよく抱きついた。
フィオーレはナーベルを受け止めながらもきょとんとし、窓の外はまだ雪の降る白銀の世界であることを確認して首を捻る。
ジェイクはフィオーレの頭にぽんと手を乗せた。
「ナーベルが『花の力』をお前に注ぎ込んだんだ。ナーベルにしてはいいアイディアだろ?」
「ちょっと…私にしてはってどういうことなの?」
ナーベルがむっとしてジェイクにつっかかると、フィオーレがなだめるようにナーベルの手をとった。
「ありがとうございます。これでまたあなたのお役に立てますわ」
ナーベルはお礼を言われて、あたふたと首を横に振った。
「い、いいのよ…、フィオーレにこの力を教えてもらっていたおかげだもの」
ナーベルが少し頬を染めて目を逸らすのを見て、フィオーレはくすくすと笑った。
フィオーレがナーベルの手を解放したところで、ジェイクがフィオーレに話しかける。
フィオーレは微笑んでジェイクを見上げ、相槌を打った。
「………」
目覚めたフィオーレと、ジェイクが嬉しそうに話すのを見て心が温かくなるのと同時に、ラディアンを想って胸が痛んだ。
(どうか、無事でありますように……)
2人から目を逸らし、窓から見える雪降る景色を眺めた。