花の魔女

****

「……あら、わたくし」


「フィオーレ!」


ナーベルの手によって目を覚ましたフィオーレに、ナーベルは勢いよく抱きついた。

フィオーレはナーベルを受け止めながらもきょとんとし、窓の外はまだ雪の降る白銀の世界であることを確認して首を捻る。


ジェイクはフィオーレの頭にぽんと手を乗せた。


「ナーベルが『花の力』をお前に注ぎ込んだんだ。ナーベルにしてはいいアイディアだろ?」


「ちょっと…私にしてはってどういうことなの?」


ナーベルがむっとしてジェイクにつっかかると、フィオーレがなだめるようにナーベルの手をとった。


「ありがとうございます。これでまたあなたのお役に立てますわ」


ナーベルはお礼を言われて、あたふたと首を横に振った。


「い、いいのよ…、フィオーレにこの力を教えてもらっていたおかげだもの」


ナーベルが少し頬を染めて目を逸らすのを見て、フィオーレはくすくすと笑った。


フィオーレがナーベルの手を解放したところで、ジェイクがフィオーレに話しかける。

フィオーレは微笑んでジェイクを見上げ、相槌を打った。


「………」


目覚めたフィオーレと、ジェイクが嬉しそうに話すのを見て心が温かくなるのと同時に、ラディアンを想って胸が痛んだ。


(どうか、無事でありますように……)


2人から目を逸らし、窓から見える雪降る景色を眺めた。


< 82 / 244 >

この作品をシェア

pagetop