花の魔女
それから、アナベラとともにナイジェルのいる家に入っていくと、パン生地をこねていたナイジェルがナーベルを見つけて、しばらく目を大きく見開いていたが、すぐにナーベルに飛びついた。
「ナーベル!ああ、ナーベル!どうして何も言わずにいなくなったりしたの、私がどれだけ心配していたか……!」
涙を流してそう訴えてくるナイジェルに、ナーベルはつんと鼻の奥が痛くなった。
「ごめんなさい、お母さん。私、どうしてかあの人と一緒にいたかったの…離れたくなかったの」
ただでさえ泣きそうだったのに、自然とでてきた言葉にはっとし、ナーベルはポロリと涙を零した。
ラディアンを助けようと決めたあの日から、涙を流したことはなかった。
けれども、この村に戻ってきて、アナベラやナイジェルと言葉を交わすたび、初めて会ったラディアンがどうしても思い浮かぶのだった。
(また、あの優しい青い瞳で私を見つめてほしい……
あなたの笑顔が見たい、声が聞きたい……)