花の魔女

アナベラは傘をコツリ、とついて一歩ナーベルの方へ近づいた。


「あの子が魔法使いになることには反対でした。それでも夫がなんとか魔女の娘を探しだそうとしていたので、わたくしはいつも邪魔をしていましたの」


ほほ、とアナベラは上品に笑った。


「あのときはまだ魔力がありましたから、夫の目をごまかして魔女ではない娘を魔女だと思わせていたの。でも、ある日気づいてしまった……」


アナベラは悲しそうに眉を下げ、ナーベルを見つめた。

ナーベルもアナベラを見つめ返し、彼女のラディアンと同じ青い瞳に映っている自分を見て、この人が自分をどうこうする気はないのだということに気づいた。


そして、ゆっくりと言葉を紡いだ。


「シャミナード家がラディアンを狙っている、ということをですね……?」


アナベラはしっかりと頷いた。

青い瞳が真剣な色を湛える。


「ええ。それで私は考えを変えたのです。シャミナードにあの子を渡すくらいなら、他の魔女の娘と結婚させて魔法使いになってしまうほうがましだって。だから私は夫にあなたを見つけさせました。あなたなら、ラディアンを悪の道から救ってくれると思ったの」


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