花の魔女
「でも、どうしてわかったんですか?その……、ラディアンがいなくなってしまったって」
遠く離れた場所にいたアナベラに、知る術はないはずなのに。
アナベラは魔法だって使えないから、見張っていたわけでもないだろう。
ナーベルが不思議そうに尋ねると、アナベラはにこっと口角を持ち上げた。
「ああ、それはね。ラディアンが髪を切ったからわかったの」
「髪……?」
ナーベルはぴくりと反応した。
「ええ。わたくしは昔からあの子に、何かあったら髪を切るように言いつけておきました。髪を切れば何がどこで起こったかわたくしにわかるように、まじないをかけていましたのよ」
髪。
ラディアンとジェイクがいつか話してくれた、あの髪のまじないのことだ。
あのまじないはまだ有効だったのだ。
だから、とナーベルは思った。
(だから引き止める私を離すためにラディアンが髪を切ったとき、アナベラさんは気づいたのね。もしかして、ラディアンはそのために……?)