花の魔女
「ドニ……、ありがとう、助かったよ」
ドニを見てラディアンは微笑んだ。
ドニは恐怖でふるふると震えていたが、ラディアンの優しい声にピタリと震えを止めた。
そして恐る恐る、ラディアンの表情を確かめる。
「ラディアン様?」
「ああ」
ラディアンはドニの腕をゆっくりと離し、不安そうな目で見てくるドニに笑顔を向けた。
「まんまとドロシーの呪いにかかってしまったよ。ドニが触れてくれなかったら、あの呪いの世界に閉じ込められたままだった」
「呪いの世界?」
ドニが眉を寄せて尋ねると、ラディアンはこくりと頷いた。
「真っ暗な世界に、僕一人がいる。そしてときどき、ドロシーの誘うような声が聞こえてくるんだ。気がおかしくなりそうだった」
言いながら、ドニが持ってきてくれた水の入ったコップを見つめた。
水に映っている自分の瞳がなんとなく暗いような気がする。
やはり精神的に疲れてしまったようだ。
これはまずい、とラディアンは内心舌打ちする。
ドニはラディアンが話した呪いの世界を想像し、ぶるっと身震いした。