花の魔女
ドニは足音を忍ばせて廊下を歩いた。
等間隔に火は灯っているものの、どことなく薄暗い。
前はこんなに暗いと感じたことはなかった気がする。
薄暗い廊下は不気味だった。
やがてある部屋の前までたどり着き、キョロキョロと辺りを確認してからドアノブに手をかけた。
ごくりと唾を飲んでゆっくりとドアを開く。
黴臭い匂いがし、目に飛び込んできたのは大量の本が並べられたいくつもの大きな本棚。
この書斎は本来なら許可が下りなければ使用人は入れないのだが、ドニは構わずに書斎に足を踏み入れた。
見つかればどうなるかわからない。
ラディアン付きの世話係がこんなところでこそこそやっているのが見つかったら、間違いなくただではすまないだろう。
シャミナードのことだ、解雇されるどころか、殺されてしまうかもしれない。
けれど、ドニはそんな危険を犯してでもこの書斎に足を踏み入れて、なんらかの情報を手に入れる必要があった。