夏の幻
……………
俺がミーコの所に通い始めて、2週間が過ぎていた。
夏休みも半ばに差し掛かるが、夏はまだまだ続くだろう。
つい最近までは鬱陶しくて仕方なかったこの夏も、今ではもっと続けばいいと思う。
こんな非現実的な毎日が、ずっと続けばと思い始めた頃だった。
…「幽霊って、何も食べないの?」
いつもの様に椅子に腰かけているミーコに俺は聞いてみた。
「ミーコが何か食べてるとこ、見たことないし」
ミーコは鈴をチリンと鳴らして振り向いた。
「…食べなくても大丈夫だけど、食べれないことはないよ」
それを聞いて「成る程」と頷くと、おもむろに鞄からそれを取り出した。
「食ったことある?チョコレート」
俺は今日担任にもらったキットカットを顔の横に掲げた。
『きっと勝つ』ためのキットカット。
受験生の必需品だ。
キットカットの醍醐味であるあのパキッという音を鳴らして2つに割り、半分をミーコに差し出した。
「甘いよ」
俺が口に入れたのを見て、ミーコもゆっくりと真似る。
キットカットもミーコが食べると、とても高価な洋菓子に見えた。
「どう?」
ミーコの顔色を伺う。