夏の幻
「…美味しい」
ミーコの一言に、俺は「だろぉ?」と笑顔で答えた。
ミーコも笑顔で、2口3口と食べる。
いつも綺麗だと感じるミーコが、なんだかとても可愛く見えた。
「ほら、口についてる」
ミーコの白い肌についたチョコレートを拭おうとした。
手を伸ばした瞬間、ミーコはガタンと立ち上がる。
…しまった、と思った。
ミーコは幽霊だ。
幽霊に触れることなんか、できないのかもしれない。
あまりにも当たり前にミーコと一緒にいるから、そんな常識的に思われることも忘れていた。
俺は顔を上げてミーコの様子を見ようとした。
でもミーコの顔を見て、ミーコが立ち上がった理由が俺が考えていた事とは違うことに気付く。
着物の裾で口元を隠すミーコ。
うつ向いた瞳の下にはまつげの影ができていて、いつも透ける様に白い頬はほんのりと赤く染まっている。
…ドキッとした。
…見当違いだったらどうしようかとも思ったが、俺はゆっくりと立ち上がった。
戸惑いながらもミーコの頬に手を伸ばす。
一瞬肩が震えたが、もうミーコは逃げたりしなかった。
初めてミーコに、触れた。