夏の幻



「…幽霊って、触れることできるんだな」


ひんやりとしたミーコの頬に触れながら、俺は小さく呟いた。

ミーコも小さく笑う。


その笑顔が愛しくて。





…俺はミーコにキスをした。





触れるだけの一瞬のキス。

何かが変わったのが、わかった。



ミーコは驚いた様に目を丸くしていたが、その瞳にうっすらと膜ができる。

それを隠す様に一瞬うつむき、すんっと鼻を鳴らして俺の顔を見た。



「…誰かに触れることなんて、もうないって思ってた」



少しだけ赤くなった鼻の頭。

照れた様な笑顔がやっぱり可愛くて、俺はそっとミーコの髪に手を伸ばした。




「…抱き締めることって、できるかな?」




俺の掌からサラッとミーコの髪が落ちる。

ミーコは目を丸くしたが、すぐに少しだけ細めて呟く。





「…試してみて」





…ミーコを引き寄せた拍子に、頭の鈴がチリンと鳴る。


俺の腕の中にすっぽりと収まったミーコは、思いの外暖かかった。




外で蝉が鳴いていた。

いつの間にか、鳴き方が変わっていた。









……………





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