夏の幻
俺は深いため息をつく。
どうしたって敬太の誘いは断れそうもない。
「…遅くまでは付き合わないからな」
「やった!」と敬太は言い、ファッション雑誌に目を戻した。
…少しくらいなら遅くなっても大丈夫だよな。
窓の外に目をやり、心の中でまたため息をつく。
太陽はまだ、高い位置でギラギラと輝いていた。
…「何が遅くはならないだよ」
ぶつぶつ言いながら自転車を飛ばす。
昼間あんなに輝いていた太陽は、気付いたら山の中に姿を隠していた。
今は静かに月が見下ろしている。
昼間よりかは幾分涼しくなった空気を切り分け、俺は洋館に急いだ。