夏の幻
…昼間とは随分違う雰囲気。
月が照らすその廃屋は、ホラー映画にスカウトされそうな気味の悪さを十二分に醸し出していた。
俺は一瞬迷ったが、鞄を握りしめ足を踏み入れる。
ギィッといういつもの音でさえ、何だか違う音に聞こえた。
…家のなかも昼間に比べて随分暗く、携帯の明かりを頼りに階段を進んだ。
何だか本当に、貞子の様な幽霊が出そうな気がする。
背筋がすっと冷たくなり、俺は急いでミーコのいる部屋へ向かった。
ドアを開けると、窓際にミーコがいた。
この部屋は月明かりが差し込んでいて、廊下より随分明るい。
ミーコはいつもの様に椅子には座っていなくて、床に座り、窓際にうつ伏せる様にしている。
「…ミーコ?」
俺の声に一瞬背中が動いたので、寝てはいないのだとわかった。
それでも振り向こうとしないミーコ。
遅くなってしまった罪悪感を抱えながら、俺は戸惑いつつもミーコに近づいた。
「ミーコ」
ミーコの肩に触れる。
予想以上に冷たい肩にドキッとした。
ミーコはゆっくりと顔をあげる。
ミーコの顔が、月明かりに照らされていった。