夏の幻
……………
月明かりが照らす部屋で、俺とミーコは横になっていた。
「明日病院に行くから、今日だけは側にいて」
ミーコはそう言った。
…ミーコの長い髪を撫でながら、俺は呟いた。
「何でミーコ、そんな格好なの?」
小さく微笑んでミーコは答える。
「…あたしのおばあ様はね、どんな時でも毎日きちんと着物を着ていたの。着物を着ると、しゃんとした気持ちになれるから…って。…亡くなるその日まで、おばあ様は着物をきちんと着ていた。」
ミーコは少し視線を落とした。
「あたしも、そう在りたいと思って。…最後までしゃんと、背筋を伸ばしていたいから。」
…ミーコの言う『最後』の意味がわかり、俺は軽く抱き寄せた。
その拍子に鈴がチリンと鳴る。
「おばあ様の形見なの」と、俺の腕の中で呟いた。
「…でもミーコ、明治のことに詳しかったよな」
「あれくらい、全部教科書に載ってるわよ」
「…だから俺、歴史苦手なんだって」
俺はポツリと呟き、ミーコはクスクスと笑った。
ミーコの笑い声が、俺の心を暖かくさせる。