夏の幻
……………
…目覚めると、ミーコは居なくなっていた。
ミーコのいた場所には、小さな紙が残されていた。
俺は静かにそれに手を伸ばす。
『シロへ』
可愛らしい、ミーコの文字。
『ミーコは猫だから、やっぱり次の場所を探しに行きます。シロと出会えて、最後にこんなに素敵な恋ができて、あたしはとっても幸せ者だと思う。このひと夏のミーコだけを、シロには覚えておいて欲しいの。一番幸せなミーコだけを、シロの中に残していきたい。だから、ミーコのことは探さないで下さい。…勝手ばっかり言って、ごめんね。』
…我慢していたのに、視界が滲んでくる。
『人生最後で、最高の幸せをありがとう。シロはあたしの、最高の光でした。
…実衣子』
「…ミーコって…本名じゃん…」
ははっと笑う。
笑いながら、涙が次から次へと溢れ出す。
俺はミーコからの手紙を、胸にきつく抱き締めた。