夏の幻
……………
「敬太、幽霊って信じる?」
冷房のない教室で、暑さを凌ぐために必死に下敷きで風を作る。
机の上にだるそうに足を乗せていた敬太は、これまただるそうな顔を俺に向けた。
「…暑さで壊れた?光」
「本気で聞いてんの」
かなり不審な視線を感じ、俺は思わず眉間にしわを寄せる。
「何、この暑さをどうにかしてくれる様な怪談話なら聞くよ」
かなりめんどくさそうに言う敬太に、俺は昨日の出来事を話す。
「いや、昨日さ…俺、見ちゃったかもしんない」
「幽霊?」
「…信じてねぇだろ」
「んなことねぇよ」と言うが、かなりどうでもいいという雰囲気が敬太から流れていた。
「まぁいいや…。とにかく昨日さ、あの暗い道通って帰ったんだよ」
「あぁ…潰れた工場があるとこ?」
「そう。その道に廃屋が何軒かあるじゃん?その中のちょっと洋館チックな…けっこうでかい屋敷わかる?」
「あれか、いかにもって感じの」
なんだかんだ言いながらも、敬太は話しに食いついてきている。
「そう。そこでさ、俺鈴の音聞いて…二階の窓に目やったわけ。したらさ…いたんだよ、幽霊」
敬太はすでに扇ぐのをやめていた。