軌跡
「やっぱりまだ、元カノさんのこと、忘れられないですか?」
「そうじゃない! ……それもあるけど、それ以上に今はやらなくちゃいけないことがあるんだ」
 それは自分自身に言い聞かせてもいた。今はやることがある、そのために孤独を選んだのだ。
「バンド、ですか?」
 睦也は小さく頷いた。
「バンド活動の邪魔になるようなことはしません。まだ元カノさんのことが好きでも……」
 睦也は首を横に振り、それ以上の言葉を遮った。続く言葉は分かっていた。そんな言葉を、一途な奈々に言わせてはならなかった。
「分かりました。でも、私諦めませんよ。絶対に振り向かせて見せますから。こないだのライブを見て、勇気をもらったんです」
「奈々ちゃん……」
それ以上の言葉を遮ろうとしたが、奈々は怯まなかった。
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