軌跡
　出番を終えた四人は、今日のライブの労をねぎらうため、客席のバーカウンターに向かった。それぞれの手元に生ビールのジョッキが行き渡り、乾杯の合図で勢いよく喉に流し込んだ。
「お疲れ様です」
四人が一斉に声のする方へと振り向くと、そこには秀樹の彼女、里美の姿があった。そしてその後ろには、優の姿も。
「お疲れ。二人も何か飲む？」
「私はいいや。優ちゃんは？」
「私も、今はいい」
　人見知りの激しい優は、最近になってようやく睦也以外のメンバーにも慣れ親しんできた。最初の内は睦也の後ろに隠れ、借りてきた猫のようになっていたのだ。これでよくショップの店員なんて出来るな、と思うが、それはそれで上手くやっているらしい。女優を目指している優にとっては、それすらも一つの演技なのかもしれない。
「この後の打ち上げは来るだろ？」
「そっちは行く！　もうお腹減った」
　里美は秀樹の腕にすがり付きながら、甘えた声を出した。
「まったく、見せ付けてくれるよな」
　太輝のひがみに、秀樹は困り顔で笑っていた。
「じゃ、さっさと飲んで移動するか」
　賢介の言葉に安堵した秀樹は、ジョッキの残りを一気に飲み干し、他の三人をせかした。
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