偽りの結婚
誰もがラルフと結ばれても文句は言えない人物であった。
けれど、婚約解消をしたのはラルフだ。
文句を言うならラルフに言ってもらいたい。
「そうですね…至らないことばかりですみません」
令嬢たちの攻撃的な言葉に、落ち着いた返答をする。
しかし、それさえ彼女たちの気に障ったようで…
「何よ、その態度。伯爵令嬢風情が生意気なのよ!」
きっと、どんな答えでもこう返されただろう。
ただ黙って受け入れるつもりだった。
しかし……――――――
「僕の妃に、何か用かな?」
え……?
次に浴びせられる罵倒を待っていると、横から思わぬ者の助けが入った。
それは彼女たちが欲してやまないラルフ本人だった。
誰もが見惚れる笑顔を向けながらも、どこか冷たさのある声で問われる。
「ラ、ラルフ様っ…!!」
途端に今まで侮辱で歪んだ顔が、焦りに変わる。