偽りの結婚



確かにシルビアは庶民の出だった。

しかし、ハロルドとシルビアはお互いが魅かれあい結婚した。

決して爵位が目当てではない。




「下々の者は野心が強くっていやねぇ」


…自分の事はいくら言われたって平気。

けれど、母の事を侮辱することは耐えられなかった。

熱いものがこみ上げる。





やめて……


声にならない声で叫ぶ。






「血は争えないってこういうことかしら?」


やめてよ……

またも声は届かない。




「きっと、あなたの母親もさぞ汚い手を使ったでしょうに」

「やめてッ!!」


ボート上でバッと立ち上がり、悲痛な叫び声が湖中に広がる。

今まで抑えていた感情が一筋の涙となって溢れた。






「私の事はどんなに責めても良い。けど、家族を愚弄することは許さないわ!」


言い終えたところで、グラリと視界が揺らぐ。




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