偽りの結婚
「そういうことではない。ただ「大丈夫よ。これからは貴方の偽りの妃としての自覚をもっと持つわ。今回みたいなことはもう絶対に起こさないようにします」
否定しようとしたラルフの言葉さえ遮り、まくしたてるように喋る。
これは、自分に言い聞かせる為に言った言葉でもある。
もう一度、あの条件を胸に刻みつけるために。
ラルフと距離をおかなければ、私がどうにかなりそうだわ……
危険信号が鳴り響く脳内で、この状況から抜け出す方法を導き出す。
そして、出てきたのは……
「それよりも、明日から3日間モルト王国に行くんですって?」
納得していなさそうなラルフを余所に、これ以上追及されたくなくて話題を変えた。
「あぁ、ちょっと公務でね。国交30周年を記念したパーティーに出席しなければならない」
やはり突然話題を変えられたことに戸惑いを感じているような声を一瞬上げたラルフ。
が、いつもと様子の違う私の様子に気付いたのか、そのまま会話を続けてくれた。