偽りの結婚
対する私はいろんな意味で焦っていた。
ラルフに密着され顔を赤くするわ、出発に遅れてしまうという心配で顔を青くするわで忙しい。
結局のところどちらにしろ原因は目の前の男。
「ラルフッ…さっさと起きなさい!!」
押し返せる限界のところまで反り返り、ラルフを一喝する。
「まだ大丈夫だ…出発まで時間はある」
目を閉じたまま受け答えするラルフに呆れる。
「ダメです!朝は早いんじゃなかったんですか?」
寝ていても視線が上の方にあるラルフを見上げる。
「ふぁ…しょうがない、君が傍にいると心地よい眠りに誘われるんだ」
やはり眠そうなラルフは、かろうじて目を開けてはくれているが、すぐにでもまた眠りそうだ。
何がしょうがないよ…
公務の方が優先でしょう!
半ばラルフの発言に呆れながらも、公務に遅れさせるわけにはいかない。