偽りの結婚
「じゃぁ、私が起きますから放してください」
いくら経っても起きようとしないラルフに痺れを切らして、自らがベッドから起きようとする。
私が睡眠への誘引剤となっているならば、私が起きればラルフも起きてくれるだろうと考えたためだ。
しかし、それをやんわりと止めるラルフ。
「はぁ…分かったよ。もう少し君を抱いて眠りたかったけど、我が妻がそう言うならしょうがない」
そう言うと、囲うように回していた腕を解く。
欠伸をしながら髪をかき上げる姿は、艶やかで男の色気を感じた。
「さ、最初からそうしてください」
ラルフの大人の色香に、直視することが出来ず、視線を外してしまう。
「はいはい、ちゃんと起きるから」
本当に謝る気はあるのか分からないような声色だったが、ラルフは宣言通りベッドから起き上がった。
「君は病み上がりだからね。まだ寝ていた方がいい」
「ありがとう…ございます……」
いつも茶化してばかりなのに、ラルフはこんな風に急に優しくなる。