偽りの結婚
瞳に戸惑いの色をうかべながらラルフを見るが、当の本人は気付く様子もなく窓辺に向かう。
「今日はいい天気だ」
ラルフがカーテンをシャっと開くと、鮮やかな青が広がる。
昨日の嵐は夜のうちに過ぎてしまったらしい。
「良かったですね、晴れて。今日からモルト王国でしょう?」
外は晴れて気分も晴れやかなはずなのに、なぜかモルト王国の名を出したら気分が沈む。
一瞬脳裏にソフィア姫の事がうかんだ。
「あぁ。体調の悪い君を置いて行くのは気が引けるが、国事だからね」
沈んだ顔をしているのを見て、まだ体調が良くなっていないととったらしい。
私はむしろ、貴方と距離を置きたいの。
貴方と一緒にいると変になりそうで。
貴方の優しさにすがってしまいそうで。
偽りの関係が保てなくなりそうで。