偽りの結婚
だから、本音を言えばこの本が欲しかった。
「頼むから返すなんて言わないでくれ。モルト王国の学者達に、妃に送りたいと言ったら是非にと持たせてくれたんだ。これで返したら恰好がつかないだろう?」
肩をすくめて笑って見せるラルフ。
「最近国に納められたものらしいから、モルト王国内では何冊もあるそうだ。だから、遠慮なく受け取ってほしい」
説き伏せるように心配の種を一つ一つ解消してくれ、無理やり押し付けるのではなく、私の想いを大切にしてくれる。
こういうところでやはり大人だな…と思う。
本当は頑固な私に受けとってもらえるようにと、ラルフが考えた策であることは知る由もなかった。