偽りの結婚



これは夫を演じているのよね?


ラルフを見上げれば、先程男たちに向けていた紳士的な笑みさえなく、表情が読めない。



なんだか機嫌悪い……?

無表情を決め込んでいるため、どこか怒っているようにも見えた。

ベルナルドとラルフの間に立つ私はベルナルドの方を向き、反応を待つ。




「当然のことをしたまでです。シェイリーンは僕にとって大事な人ですから」


ベルナルドは、不自然なくらいニッコリとした表情を作り、答えた。



あれ?ベルナルドさんも……?



いつもは温かな微笑みしか見たことがないため、今の笑顔は違和感を感じる。

ラルフをしっかりと見据えて、お互い視線を逸らさない。

それは、どこか挑発しているような顔つきにさえ見え、二人の間に妙な空気が流れだす。



「それは聞き捨てならないな。一体どういう意味かな?」


口元は笑っていたが、その紺碧の瞳は剣呑な光を放っている。






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