偽りの結婚
「今日はいつもよりも忙しそうね」
こんなにも厨房が忙しそうに動いているのは初めての事だった。
「夜のパーティーのための準備をしております。普段ならこんなに忙しくはないのですが、厨房のスタッフが離宮へ行っておりまして。人数が足りないので、王宮に残った者に手伝ってやってもらっているのですが、慣れていないせいか上手く回せませんで、ごたごたしてしまっている次第です」
「そうでしたか」
確かに、厨房を見渡せば、確かに使用人と思われる者たちが混じっていた。
ここを手伝っていたから、使用人部屋に誰もいなかったのね。
「さて、今日は何をお求めで?調理の必要があれば、シェイリーン様のご所望のものを作らせますが」
料理長は気さくにそう話すが…
「えっ?あっ…いいえ。食材を分けて欲しいだけよ。出来たら、調理場も少し貸していただきたいのですが」
さすがに、こんなに忙しい中作ってもらうのは気が引けるわ。
「そんな!シェイリーン様に作らせたとなると、私がお叱りを受けます!」
両手を前にかざしながら、焦ったようにストップをかけられる。