偽りの結婚





口は開くのに、舌が張りついたように何も言えない。




「なぜそれを?」


カラカラの口から、やっとのことで絞り出した言葉はたったそれだけ。

それ程ソフィアがもたらした言葉の衝撃は大きかった。




「前にラルフがモルト王国を訪問した時があったでしょう?その時に聞いたのよ」


私が驚愕していることに、ソフィアも若干驚きつつ、躊躇いがちに話す。




あの密会のとき…?




「その時から、私とラルフの関係をご存じだったのですか?」


震え始めた声を抑えたため、少し小さくなる声。

誰も何も、重要なことは私に言ってくれない、伝えてくれない。



「えぇ。その様子じゃ、ラルフはそのことも貴方に伝えていなかったのね」



ソフィアが焦っている様子から、他意はないことが窺えるが、それもそうだろう。

偽りの関係だと知っているということは、あの条件も知っているはず。




“お互いに本気にならないこと”



ソフィア様はまさか私がラルフを想っていることなど知らないだろう。




< 376 / 561 >

この作品をシェア

pagetop