偽りの結婚
シーンと静まり返る廊下。
王宮に使えるものは警護や給仕でパーティー会場へ赴いていたため、誰ともすれ違わない。
しかし、私にとっては好都合だった。
瞳が涙の膜を張り、胸の痛みで歪んだ顔を誰にも見られたくなかったから。
いつもよりも早足になりながら、一人王宮の廊下をスタスタと歩く。
向かった先は、ラルフがいる使用人部屋ではなく、王宮に来てから書庫に続いて私の安らぎの場となった寝室だった。
駆け込むようにして入った寝室は暗かったが、そんなことは気にも留めず、寝室のドアを閉めた瞬間、ドアの前で全身から力が抜けたかのようにへたり込む。
秒針のカチッカチッという音だけが響くその部屋で、深呼吸を一つする。
遂に、この時が来たのね。
ラルフと離婚する時が…
次にラルフに会うときは、別れの言葉を告げられる時かしら。