偽りの結婚
なのに…なんで今更……
ラルフを愛する気持ちと、ソフィアを好きな気持ちの間で板挟みになり、苦しい。
真っ暗な寝室の扉の前で、声も上げず嗚咽していると────
「シェイリーン?」
「っ……!」
暗闇の奥から自分を呼ぶ声がした。
それは、この寝室にいるはずのない者の声だった。
低く響くテノールは耳に馴染む心地良い声だが、それは今でない状況の時。
予想外の人物の声に焦るが、腰が抜けてその場から動けない。
「シェイリーン…いるのか?」
返事がないことに、少し訝しげな声を上げ、続いて聞こえてきたのは衣擦れの音。
おそらく、ベッドから降りているのだろう。
足音が耳に入り、急いで溢れる涙を拭う。
暗いから大丈夫、と油断していると…