偽りの結婚
──────シャッ…
寝室のカーテンが勢いよく開いた。
途端に寝室が月光を浴びて淡い光に包まれる。
「あぁ…やっぱり」
振り返って、低く甘く響く声で呟いたのは想い焦がれてやまない人。
「パーティーに行っていたんだろう?早かったね」
寝室にラルフの嬉しそうな声が響く。
「ラル…フ……」
背に月光を浴びたラルフがあまりにも綺麗で、一瞬言葉を失くすが、何か言わなければと焦る気持ちから、愛しい人の名前を呟く。
カーテンを開いたことで部屋に光が差し込み、ラルフは迷いなく私の元へ真っ直ぐ来た。
何故ここに?
使用人部屋で寝ていたんじゃないの?
オロオロと慌てる私の前で足を折り、目線を同じ高さに持ってくるラルフ。
すると、嬉しそうな表情を一変させ、その顔に緊張が走る。
「また、一人で泣いていたのか?」
先程よりも低く響くテノールの声。
なんで泣いていたってわかったの?
頬を大きな手で包まれ、視線を固定されてしまっては、逃げ場がなかった。