偽りの結婚




何故、引きとめるの?


ラルフが言ったことの意味をどう取って良いか分からずに押し黙る。

そればかりか、嬉しいのか悲しいのか、訳の分からない感情が支配して胸が苦しい。

キュッと結んだ口が、その感情を抑え込んでいたが、耐えきれなくなったものが涙となって溢れてくる。

涙を流しているのは当然、抱きしめているラルフにはばれていて…





「もう泣いていた理由は言わなくてもいいから、離れるな。傍に居てくれ」


切なげな…それでいて切実な声でラルフは私に囁く。




「ラル…フ……っ」


ソフィアに悪いと思いながらもラルフを想う気持ちと。

離れなければいけないのに、突き放すことのできないこの体と。

自分の心と体なのに、まるで制御できないめちゃくちゃな感情に振り回され、涙を流すこととラルフの名を呼ぶことでしか、その感情を出すことが出来ない。




好き…なの……



恋ってこんなに苦しいものなの?



愛ってこんなに切ないものなの?




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