偽りの結婚
「ラルフ様、私ならシェイリーンよりも魅力的だと思いますわ」
イリアはそう言って、抱きついた腕にグッと胸を押しつけてくる。
確かに容姿は良い方で、そこら辺の男たちなら簡単に落とせるだろう。
落としてきたからこそのこの自信なんだろうが。
キツイ香水に、濃い化粧、誘うような視線…全てが嫌悪の対象でしかない。
「丁重にお断り致します。まだ、私は結婚している身ですからね」
イリアの腕をやんわり解きながら、そう言う。
「え?だって、シェイリーンは離婚したって…」
イリアもミランダも驚いている様子。
その驚いた顔に一人満足しながら続ける。
「確かに、シェイリーンから離婚の申し出がありました」
紳士的な笑みを浮かべ、自分でも不思議なくらい冷静に口にする。
ミランダとイリアは“離婚”という言葉が出てきたことに嬉々としているが…
「しかし、私はそれを承諾した覚えはありません。離婚は両者の承諾があって初めて成立するものです」
真剣な表情で話をすれば、今度はスターン親子が唖然とする番だった。