偽りの結婚
「もう、お帰りですか?」
ふと背後から冷たい声がかかる。
振り返るとそこには、腕組をし、廊下の壁に背をあずける様にして立つ青年がいた。
先程の少女よりも赤が薄い茶髪に、琥珀色の瞳、スラッと長身の青年は間違いなく社交界では令嬢が放っておかない容姿をしている。
目の前を通ったはずなのに、全く視界に入らなかった。
シェイリーンの事を考えていると周りが見えなくなるらしい。
やはり重症だ。
「あぁ…確か君は、ベルナルド君だったかな?」
本人の誕生パーティーで会っているが、わざとらしくそう言えば、ベルナルドがフッと笑う。
「白々しいですね。ここには貴方に媚びるような人はいませんよ」
ベルナルドの言い方は本性を出したらどうだ、と言っているようだった。
「そうだったな。全く、兄妹というものは本当に似るものだ」
敵意を隠そうともしないベルナルドに、先程のアリアが重なり、クッと笑う。
「では、遠慮なく」
そう言って、改めてベルナルドに向き直る。