偽りの結婚




「はい……」


涙で震える声で素直に答える。

ベルナルドはその姿を見て目を細めて、頭に置いた手を離す。




「夜遅くにすまなかったね。もう、部屋へ戻るよ」

「ベルナルドさん…」


部屋を去ろうとするベルナルドを、咄嗟に引きとめる。





「ん?」


笑顔で振り返るベルナルド。



「ありがとう…ございました。」

「どういたしまして。お休み、シェイリーン」


ベルナルドはそう言って、部屋を出た。













バタンッ―――



「お疲れ様です、お兄様」


部屋を出るなり、小さい声で声を掛けられる。



「あぁ、本当に疲れたよ」


シェイリーンが使っている部屋から遠ざかりながら、声を掛けてきた人物、アリアに話しかける。


「あら、完璧でしたわよ、お兄様の演技」


能天気なアリアの言葉に、はぁ…と溜息を吐き出す。





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