偽りの結婚
「想いを告げることは、誰も傷つけはしないよ」
ぽんっと、頭に手を置かれる。
「君はラルフ王子に想いを告げたらソフィア様を傷つけると思っているんだろうが、それは違う。想いを告げる事は誰にでも平等に与えられた権利なんだ。現に、僕もラルフ王子を想っている君に告白しただろう?」
「っ…!」
ベルナルドの言葉にハッと息をのみ、食い入るように琥珀色の瞳を見つめた。
「告白してからは、その人が決める事だ。シェイリーンは、僕が告白したことで傷ついたかい?」
ベルナルドの問いに、はフルフルと首を横に振った。
「ラルフ王子も、きっとシェイリーンの想いを受けとめてくれるはずだよ?」
けれどベルナルドさんと私では身分が違いすぎる。
私は王族に対して、こんな想いを抱いているのよ?
伯爵ふぜいの私がそんな資格や権利を持っていない。
「シェイリーン、想いの前では資格も権利もない。平等だといったろう?」
ベルナルドは私の揺れる瞳から読み取り、私に告げる。
一つ一つ不安を取り除いてくれるような優しいベルナルドの声に、瞳が潤む。
「もう一度、自分の気持ちと向き合った方が良い」
頭に置かれた手で、くしゃっと髪を撫でられる。