偽りの結婚
トンッ―――
ラルフの胸を両手で力いっぱい突き放し、ラルフの胸に両手をあてたまま俯く。
大人しく腕に抱かれていた私に油断していたラルフは一瞬のうちに私との距離がひらいた。
この距離は私のため。
私が私でいられるための距離なの。
ラルフの胸の中にいたら自分が弱くなってしまいそうで。
その胸に縋りついてしまいそうで。
せめて距離だけは置きたかった。
「ごめんなさい…わたし…ふっ……っく」
瞳からとめどなく涙が溢れる。
言葉を紡ぐのも苦しさを伴うように、一つ一つ話していく。
ラルフはただ静かに耳を傾けてくれる。
「貴方の事を…好きになってしまって…でもっ…どうしてもこの想いだけは伝えたくて…」
もう一度言うの…
仮面を付けていない真実の私から貴方へ。
その勇気を胸にゆっくりとラルフを見上げる。
「あなたの事が…」
好き……と言いかけた言葉は途切れる。
ラルフの口づけによって――――