偽りの結婚
すると途端に眩しい光に包まれる中庭が目に飛び込み、目を細める。
段々とその眩しさに目が慣れてくると会場の様子が明らかとなる。
王宮の中庭は規模はあまり大きくないものの、外庭に匹敵するくらいの花々でが綺麗に咲き誇っていた。
その中心は花を植えておらず、普段なら午後のティータイムなどに使う場所。
けれど今日は参列者が座る椅子で満たされていた。
そしてその向こうでは正装したラルフが待っている。
思わず見惚れてしまうほどのその容姿にモニカの言った通りラルフだけを見つめた。
一歩、そしてまた一歩、私は真っ直ぐラルフの方へ歩いて行く。
私を見つめる紺碧の瞳から目を逸らすことなく。
長いようで短い距離を歩きラルフの隣に並ぶ。
「綺麗だ」
掠れた声で囁くラルフにドキドキと胸の鼓動が甘く高鳴った。
「ラルフ…」
同じく緊張のためか掠れる声。
ラルフはフッと微笑み私の手を取って祭壇の前に促す。
そんな二人に司祭が微笑みかけ、静寂の中厳かに式は執り行われた。
長い式も後半に差し掛かった時―――
「では指輪の交換を」
厳粛な雰囲気で祝詞を述べていた司祭が本を置き、朗らかな笑顔と共に二つの指輪が置かれている箱を差し出す。