偽りの結婚
「じゃぁ…あなたがラルフ王子?」
「ああ、そうだ」
工程の言葉にクラリと眩暈がするのが分かった。
「やっと気付いたのか?壇上で挨拶をしたのに、気付いてもらえなくて残念だったよ」
まぁ、あの時は表向きの挨拶だったから声は変えていたんだけどね…と言うラルフの声は、すでに私の耳には届いていなかった。
ど、どうしよう…
あろうことか、目の前の男がこの国の王子だったなんて。
私なにか失礼なことしなかったかしら…
ラルフと会ったときから今までの行動で、自分の失態がなかったか記憶をたどる。
「申し訳ございません。ラルフ様とは気付かず、失礼いたしました」
ベンチに座るラルフに向かって、頭を下げながら非礼を詫びる。