偽りの結婚




「ふぅ…今日はこれくらいにしておこう」


一つ溜息をつき、本から目を離す。





「どれくらいここに居たのかしら」


ふと外を見れば、もう夕日で赤く染まっていた。






「全部読めなかったわ。借りて帰りましょう」


テーブルに積まれた本はまだ数冊ある。

書庫は自由に使ってもいいと言われていたため、読み切れなかった本を手にとり自室に戻った。





寝室――――――


持ち帰った本をベッドの上に置く。

ラルフは帰ってこないのだからベッドを占領しても良いわね。

夫が帰らないことにほくそ笑む妻など、私くらいだろう。

さて、どの本から読もうかしら…と思っていると。





コンコンッ…―――――



「シェイリーン様、夕食のご用意が出来ましたので、お部屋にお越しくださいませ」


借りてきた本をベッドの横に置いたところで、部屋の外からモニカに声をかけられる。

そっか、もう夕食の時間なのね。

そう思うと急にお腹がすいてきた。





「今行くわ」


扉の向こうのモニカに声をかけて出ていく。


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