王国ファンタジア【氷炎の民】外伝~新生~
家の外に出ると、レジアスが探すまでもなく銀髪の少年はすぐ近くに居た。
アイフェリア家の屋敷内に部屋をもらって住んでいたレジアスであったが、結婚後は近くに小さな家を建てていた。
家の中はメイリアの手によって居心地よく整えられていたが、庭にはまだ手が回っていない。
その殺風景な庭と道を隔てる塀に寄りかかって、彼の小さな主は図書館から借り出したのであろう本を開いて読んでいた。
追われるようにして王国の北の辺境に居住地を移した<氷炎に民>にとっては、本は貴重品だった。
活版印刷が発達していない王国自体でも本は稀少品であったし、その当時、ここまで持ち出された本も少なかった。
おまけにあまり他の民との交流もなく、滅多に外界に出ようとしない彼らである。持ち込まれる本もないわけではなかったが、もちろんごく少ない。
そんな稀少な本を<氷炎の民>は図書館で一元管理していた。
少年は家の外に出てきたレジアスに気づくと本を閉じ、大事そうに抱え込む。
「遅かったね」
にっこりと笑った。
「それは……。サレンス様、知ってたんですか?」
「うん、さっき聞いたから」
少年の答えにレジアスは不満げに軽く睨む。
「何で、私より先なんですか」
青年の態度に微塵も臆することもなくサレンスが答える。
「僕とメイリアは親友だから」
「だからって」
酷くないか、それは、とでも言いたげにサレンスをさらに睨むレジアス。
しかし、少年は彼の視線を軽く受け流しただけだった。
「で、ご感想は?」
「それは……」
言いよどむレジアスに少年は容赦をしない。畳み込むように質問を重ねる。
「嬉しい?」
「……」
答えないレジアスに業を煮やしたか、少年は口を尖らした。
「嬉しくないんだ。ふーん」
少年は凍青の瞳を意味ありげに瞬く。無駄に長い銀の睫がばさばさと音を立てそうである。
メイリアに言いつけようかなあなどと、小さくつぶやかれレジアスは慌てて口を開いた。
アイフェリア家の屋敷内に部屋をもらって住んでいたレジアスであったが、結婚後は近くに小さな家を建てていた。
家の中はメイリアの手によって居心地よく整えられていたが、庭にはまだ手が回っていない。
その殺風景な庭と道を隔てる塀に寄りかかって、彼の小さな主は図書館から借り出したのであろう本を開いて読んでいた。
追われるようにして王国の北の辺境に居住地を移した<氷炎に民>にとっては、本は貴重品だった。
活版印刷が発達していない王国自体でも本は稀少品であったし、その当時、ここまで持ち出された本も少なかった。
おまけにあまり他の民との交流もなく、滅多に外界に出ようとしない彼らである。持ち込まれる本もないわけではなかったが、もちろんごく少ない。
そんな稀少な本を<氷炎の民>は図書館で一元管理していた。
少年は家の外に出てきたレジアスに気づくと本を閉じ、大事そうに抱え込む。
「遅かったね」
にっこりと笑った。
「それは……。サレンス様、知ってたんですか?」
「うん、さっき聞いたから」
少年の答えにレジアスは不満げに軽く睨む。
「何で、私より先なんですか」
青年の態度に微塵も臆することもなくサレンスが答える。
「僕とメイリアは親友だから」
「だからって」
酷くないか、それは、とでも言いたげにサレンスをさらに睨むレジアス。
しかし、少年は彼の視線を軽く受け流しただけだった。
「で、ご感想は?」
「それは……」
言いよどむレジアスに少年は容赦をしない。畳み込むように質問を重ねる。
「嬉しい?」
「……」
答えないレジアスに業を煮やしたか、少年は口を尖らした。
「嬉しくないんだ。ふーん」
少年は凍青の瞳を意味ありげに瞬く。無駄に長い銀の睫がばさばさと音を立てそうである。
メイリアに言いつけようかなあなどと、小さくつぶやかれレジアスは慌てて口を開いた。