王国ファンタジア【氷炎の民】外伝~新生~
「ちょっ、メイリア、からかっているのか」

 怒ったように告げるレジアスに、メイリアのほうがキレる。ほとんど怒鳴るような勢いで叫ぶ。

「できたのよっ!」
 
 それでもレジアスは推察できない。
 条件反射的に尋ねる。

「何が?」
「赤ちゃんが!」

 告げられた言葉がレジアスの胸の中に落ちたとき、思わず叫び返した。

「赤ちゃんっ!」
「なによっ! 不満?」

 言葉は怒ったように告げられたが、メイリアの青い眼差しは揺れている。
 驚いてはいるが喜びの色が見えないレジアスに、彼女は不安を感じていた。
 果たして。

「いや、不満とかそういうじゃなくて、とりあえずびっくりした」
「なんなの、それ。今までできなかったのが不思議なのに……」

 うつむいてしまうメイリアに慌ててレジアスが声を上げる。

「そ、そうだな。うん」

 今ひとつ煮えきれないレジアスの返事にメイリアは顔を上げ、今度は怒り出す。

「もうっ。ちょっとっ!」

 しかし。

「ありがとう」
「えっ?」

 告げられた真っ直ぐな言葉にメイリアは口を閉じる。
 そこには嬉しげに笑う彼女の夫の姿があった。

「ありがとう、メイリア」
「うん」

 夫の感謝の言葉にようやくメイリアは安心したように微笑んだ。

 極上の微笑だった。
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