宝石よりも

『行こう、今すぐ』



病院に。

早く、七海に。



『待て、カイ!』



駆け出そうとする俺の腕を、直樹があわてて掴んだ。

前に勢いよく進もうとしていた俺の体は、直樹によって引き戻されてしまった。



『なんでだよ』



七海が目を覚ましたのに。

目を開けている七海に会えるのに。


七海の声が聞けるのに。



直樹はそんな俺の様子に、躊躇いがちに言葉を紡ぐ。



『七海は目を覚ました、けど』



けど……?


直樹の唇が、スローモーションみたいに動いた。



直樹の言葉の意味を理解した途端、


俺の手にあった鞄はするりと手から抜け落ち、地面に教科書が散らばった。


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