ヒレン
「…好きだからこそってことですか?」


「…うん」


感じた胸の痛みの意味を知るのはもう少しあと…


「ありがと。お休み」



5階でエレベーターが止まると、智子は秀明に別れを告げた。


7階で降りると、鍵を取り出し、扉をあけた。


部屋の中に入ると、靴も脱がずにその場に崩れ落ちる



「…して」



わからない。


気がついたらシンちゃんさえも知らないことを口に出していた。


どうして?



何重にも、自分でも解き方を知らない、知恵の輪みたいにぐちゃぐちゃに閉じられた、閉じたはずの心の扉を簡単に、でも1つ1つ丁寧に秀明(かれ)は解いて中へと入ってくる。



携帯を取り出し、押すのは短縮0番。



お願い出て。



数コールの後、聞こえた愛しい人の声


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